SAKEBI 美しい酒と若者の叫び

2014年02月号

蔵人日記 第一話「仕込み」

2014年02月15日 21:03 by NextSakeGeneration

某県、某酒造。蔵の将来を担うべく跡取り息子が帰ってきた。

初めての酒造り。

蔵人一年生。

現在彼が取り組んでいる「酒造り」を全3回でお届けする。

蔵人日記第一話「仕込み」

 まだ日の昇らない午前5時、耳元でiPhoneのアラームが鳴り響いた。すぐに画面をスライドさせアラームをOFF。もうこの時間に起きることにも慣れてきたはずが・・・やっぱり眠い。無理矢理体を起こすため外に出る。いつまでも布団の中にいた学生時代はもう戻ってこない。

 

今日も仕事だ。

 

さっそく釜場に向かい「蒸きょう」行う。「蒸きょう」とは水分を吸った米を蒸す作業である。昨日洗っておいた米を準備し、釜に火をつける。数百キロの米を蒸す光景はなかなかの迫力だ。高温の蒸気で米を蒸すので一歩間違えれば火傷してしまう危険な作業である。朝から気が抜くことはできない。蒸し時間は約50分、この間を利用しコンビニへ行く。早朝の人気少ないコンビニに近所の酒蔵の従業員がいた。目が合うとお互いむくみのとれていない疲れた顔でニヤリと笑う。この時期蔵人同士に会話はいらないようだ。

蒸し上がった米は2つの使い道に分かれる。1つは「掛米(かけまい)」といって目標温度まで冷やしタンクに仕込む。もう1つは「麹米(こうじまい)」といい、蒸した米に麹菌を増殖させてからタンクに仕込むのである。

麹米用の蒸米は目標温度まで下げた後、麹室(こうじむろ)に入れる。重たい蒸米を布にくるみ何度も繰り返し運ぶ。もたもたしていると蒸米の水分が飛んでしまうのでペースが早い。蔵人の筋力&体力に少しビビる。

全て麹室に蒸米を引き込んだら、薄く広げる。頃合いを見計らって製麹(せいぎく)の担当者が種麹を振る。振りかける量で今後の温度経過等に影響がでる。麹について色々質問してみた。方言だらけでよくわからなかったが


「まあ、経験と勘だな」

 

とのこと。なるほど、わからん。

掛米は醪(もろみ)タンクへ放り込む。

添(そえ)、仲(なか)、留(とめ)と三日かけてこの作業を行い醪にする。

今日は留仕込み、蒸米と麹を入れ終わったら櫂入れ(かいいれ)をする。

※櫂入れとは・・・櫂棒を使って醪をかき混ぜる操作のこと。

よく友人に酒蔵で働いている事を話すと

「えっ、じゃあ毎日こうやって混ぜてるんでしょう?」

と笑顔で腕をぐるぐる回す動作をする。

実際はそんな甘いものではない。

蒸米と行っても柔らかいものではないし、仕込んだ後の醪は見た目ほとんど米だし相当量入っている。

全ての米が入っている留仕込み後は一番キツイ。

腕、背中、腰、膝のクッションなど全身の筋力を使い、歯を食いしばって櫂棒を突き刺し引っ張り上げる。

これを全体が混ざるまで行う。が、なかなか混ざらない。

 冷蔵庫の中なので寒いはずなのに上着を脱ぐ。

寒いのか暑いのかわからなくなる。

蔵で働きだしてから筋肉がついてきた気がする。高校時代部活で出来上がったと思っていた肉体がさらにパワーアップするとは、おそらくこの作業が原因のはずだ。

ようやく醪全体が均一に混ざってきた。

達成感&疲労感

俺の体がまた一つ蔵人に近づけたような気がした。

さて次の作業だ。

(次号へつづく)

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