京都の身を切るような寒さに震えながら帰り道を歩けば、ありあまりで作れるつまみを考えてみて、「鍋で一杯やるのもいいだろう」とか、どこかの家の夕飯の匂いに今晩のおかずを予想して、合わせるお酒をあれやこれやと思ってみては嬉しくなる。
結局はスーパーのへたりこんだ惣菜をあさってあっちっちのお酒で健康的に二合ほど飲んでは、また外に飲みに行きたくなる。
「”寒くってきましたから”としれっと嘘をついて燗酒を飲めますもの。」と隣の誰かが言っていたのをにんまりと聞いて肉豆腐に乗っかった熱々の葱なんか食べながら、店の外を見れば寒そうな様子に、次いで飲んだ熱い酒が更に旨く感じるような気がして、まったく酒飲みで良かったなんて思ったりする。
ふらふらと外を歩けば、ふらふらと歩いている人を見て苦笑いしながらもこれまた酒飲みで良かったなんて思ったりする。
鴨川流れる岸辺に思い出は帰らず。
あの人はもういないのねと、ありもしない思い出と馬鹿げた感傷に浸り、後ろに女の子を乗せた二人乗りに追い越されて、家に帰ればもう二度と酒など飲むものかと思ってみたりする。
ありゃまくん:単なる酒飲み。21歳。
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