SAKEBI 美しい酒と若者の叫び

2013年8月創刊号

イヴェントレポート『A-SONIC vol.1』

2013年07月22日 07:46 by NextSakeGeneration
2013年07月22日 07:46 by NextSakeGeneration

 

 麻生醤油醸造場をオフィシャルスポンサーとして迎え入れ、NextSakeGeneration(以下NSG)が今若者に”飲んでもらいたい酒”  ”使ってもらいたい調味料” ”聴いてもらいたい音楽”の3つをテーマに開催した〔A-S0NIC vol.1〕。NSGがNextSakeBreweryとして注目する羽根田酒造を中心とした日本酒のラインナップ、弊マガジンでも紹介した”麻生醤油醸造場”の調味料を使い、管理栄養士・料理家として活躍中の古川恵美佳氏が考案した料理、そしてそれぞれ本格的に音楽活動に取り組むnemo asakura、大林いくお(OFSTRUCTION)、笹口騒音ハーモニカ(うみのて、ex.太平洋不知火楽団)3名のアーティストが集結し叶った企画である。NSG初のイヴェント開催ということで実験的要素を含む不安多き内容だったが、DJとして迎え入れた練馬区在住のDTY a.k.a YAMAGISHIがそんな不安を一蹴するかのように〔A-SONIC vol.1〕は幕を開けることとなる。

 ターンテーブルのスクラッチ音と日本酒が共存する瞬間を誰が予想できただろうか。YAMAGISHI氏が酒を飲むのにちょうど良い音圧でナンバーを流しながら、回っているレコードにそっと手を添え観客の様子を伺う。徐々に盛り上がりを見せる中、次のナンバーを探しつつ擦りつつ。しかしながら、時間となり惜しまれつつも最初のDJタイムは終了した。

クリーンでふくよか

 「酒に合う音楽」というこちらの要望を快諾してくださったnemo asakura氏。弾き語りをあえてエレキギターで行う理由は”クリーンでふくよかさ”を出すためだと言う。実はこの”クリーンでふくよか”というキーワード、日本酒にとっても理想的な表現でもあり、意外なところで音楽と日本酒の共通点を見つけることができた。演奏力の高さもさることながら、全曲英詩と日本人離れした歌唱力で一瞬にして独特の雰囲気を醸し出してくれた。静かに酒を嗜みたいとき、きっと彼の音楽が心地よい世界へと誘ってくれるはずだ。MCでは料理の紹介として心を込めて料理名を読み上げてくれた。「料理名を読み上げてもらったとき、真の意味で料理が完成した気がする」と管理栄養士・料理家の古川氏が後に語っていたことをnemo氏は知らない。

〜読み上げられたメニュー〜

麻生風 豚の角煮

麻生味噌で漬けた濃厚!豆腐味噌

麹の風味が効いてる!チーズマヨポテト

にんにくの香りと甘みが癖になる!焼きにんにく入りメンチカツ

だいきち畑の味噌じゃがバター

 上記メニューの他に麻生醤油醸造場の商品をもっとシンプルに味わっていただくために用意された”麻生家のみそ汁”は、すべて来場者に味わってもらいたいというスポンサーの意向から特別に無料で提供されることとなった。

日本酒のこだわり

 今回選んだ日本酒は所謂”チェーン店の飲み放題”で飲める(飲まされる)ような日本酒ではなく、若者が触れ合う機会が少ないかつ手頃な価格で手に入れることに重点をおくことにした。山形の羽根田酒造は日本酒業界では知らない人はいない故上原浩先生(酒造技術者)が絶賛した伝説的酒蔵であるが、最近若き後継者が蔵に戻ったことでこれからますます注目を浴びる酒蔵の一つである。蔵元と相談の上、当イベントではFirst impressionでインパクトを与えることを目的とし、あえてレギュラー製品ではなく限定品の「羽前白梅 純米吟醸 俵雪 濁り」を提供。普通の”濁り酒”(メッシュの荒いもので濾すため、もろみ由来の糖分などが多く含まれ甘く重たい口あたりになりがち)とは違い、俵雪は通常の清酒と同じように上槽(※もろみを搾ること)される。滓が沈殿する前に瓶詰めする為、濁っている酒なので、なめらかな口あたりとフレッシュな感じが特徴の酒である。また「羽前白梅 梅酒 梅湧水」は文字通り純米酒(原材料:米、米こうじ、水のみで造られた酒※細かい定義は割愛)を使用された梅酒だ。甘くなく、くどすぎず、スッキリとしている。焼酎で造られた梅酒とは違いアルコール度数も低いためストレートでも美味しくいただける一品だ。大林いくお氏も甘ったるいイメージのある梅酒に抵抗があるようだが、今まで飲んだことのある梅酒のとギャップに驚いていた。

NextSakeStyle

 キャッチーなギターフレーズでつい口ずさみたくなるような歌を歌う大林いくお氏。彼の音楽は人を楽しくさせる力がある。楽しくなると体が動く。彼のメロディーで体が揺らされた者の中には普段より酔うのが早く感じた人もいたのではないだろうか。彼の楽曲を効きながら酒を飲むことは、ある種、次世代の飲酒スタイルと言っても良いだろう。

 そして今回トリを務めたのがこの漢、笹口騒音ハーモニカ。イヴェント終盤にさしかかり観客の酔いも最高潮に達していた時、彼は故Bob Marleyを憑依しステージに現れた。ざわつく観客が静まりかえり彼への注目が集まった。これが日本に現存する最後のロックスターの力なのか。歌いだすと顔つきが変わる、皆が聞き入っている。MCでは和ませ、曲では皆を聞き入らせる。(※ちなみに曲の途中でもMCが入ることがある)とにかくメリハリが凄かった。途中コール&レスポンスの反応が少し悪かったのは笹口氏への畏敬の念の表れ、もしくは飲酒による判断力低下によるのもだろう。最後は歌にのせて料理名を叫びイヴェントを締めくくってくれた。

 nemo asakura、大林いくお、笹口騒音ハーモニカ、3氏がそれぞれが酒に合う音楽を提供してくれたおかげか、イベント終了時にはほとんどの料理と酒がなくなってた。訪れた人のほとんどが音楽だけでなく酒と料理を体験してもらったこととなる。これは〔A-SONIC vol.1〕が大成功で終えることができたと言っていいだろう。これも偏に出演者ならびに来場の皆様の温かい好奇心によるものと思う。この場を借りて心より御礼申し上げたい。

 初のイヴェントを通じ、多くの反省点、改善の余地を抱えることとなった。さらなるイヴェントの質の向上に努めて参りたいと思う。麻生醤油醸造場とNSGの挑戦はまだまだ続く。

(取材・文:NSG 写真:フォトグラファーTAKESHI ANDO 粟飯原 洋貴 場所: playroom)

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